タミフルの副作用についてセンセーショナルな多くの報道がなされ、みんなそれが確定したかのように思っているのではないだろうか。
実際にはタミフルを服用した場合としなかった場合とで異常行動の発現頻度は統計的に意味のある差はないそうだ。
それにもかかわらず、マスコミの過剰報道から「タミフルはあぶない」との与論が形成され、厚労省も年少者への処方を中止するよう指示せざるをえなくなった。
マスコミは自らの報道が政策まで変える力があることをよく認識し、もっと責任を持って正確・中立な報道をすべきだと思う。
下記に引用した専門家は、
「もっとも日本はタミフルの世界生産の7割を1国で消費する異常な状態にあり、そのことを憂慮する医師は多かった。薬の多用で耐性ウィルスが生じると、いずれ訪れるインフルエンザ大流行の際に、人類が持つ有効な手立てを失うことになるからだ。・・・社会全体で考えると、いざというときの仕様に備え温存すべき薬である。しかし、一般の方にその辺の事情を理解いただき、投薬を控えるのは困難な情勢にあった。」
として、結果して社会にとってよかったのかもしれない、と言っているが、マスコミはそのペンの力で、こういう問題こそを世間に訴るべきではないだろうか。
参考資料:
「タミフル問題で考える投薬のあり方」
日本赤十字医療センター 呼吸器内科副部長 生島壮一郎氏
(電機新聞 平成19年5月11日掲載)
インフルエンザ治療薬タミフルが異常行動を誘発するのではないか、という問題が大きなニュースになった。マスコミ論調には製薬会社、厚労省、医師が結託し有害な薬を使い続けたのではないかというものもある。一部の有名なジャーナリストの「この問題は第2の薬害エイズ」とする記述もあるようだが、大きな誤解だ。ある病気の改善のため薬を服用後に発生した新たな症状は、もともとの病気によるのか、薬によるのかを検証することは大変難しい。
今回の件では、服用していない人にも同様の症状の報告がある。ウイルスの影響が脳に及び生じる「インフルエンザ脳症」によっても異常行動をきたすことがある。厚労省は、このことを踏まえて患者調査を行い、タミフル服用者と非服用者に分けて調べ、それぞれの異常行動の発現頻度は11.9%と10.6%で、服用者の発現頻度が高めではあるが、その差は、統計的に有意な水準に達しているとは考えられないとの見解だった。
この判断は至極妥当で有意義な結論である。実際に異常行動の事例が続いており再検討は必要だろうが、副作用と断ずるような報道や薬害としてセンセーショナルに取り扱う報道のあり方は事実をゆがめる危険がある。
もっとも日本はタミフルの世界生産の7割を1国で消費する異常な状態にあり、そのことを憂慮する医師は多かった。薬の多用で耐性ウィルスが生じると、いずれ訪れるインフルエンザ大流行の際に、人類が持つ有効な手立てを失うことになるからだ。個人にとり一日も早く解熱することに越したことはないが、社会全体で考えると、いざというときの仕様に備え温存すべき薬である。しかし、一般の方にその辺の事情を理解いただき、投薬を控えるのは困難な情勢にあった。
その意味で、多くの臨床医は、今回の一件が違った意味で社会の流れをよい方向へ導く効果を持っていた、と考えているのではなかろうか。
この記事へのコメント